風姿花伝

読んでみました。

「いつか読んでみたかった日本の名著シリーズ⑨ 風姿花伝

 

とにかく読みやすかったです。ビジネス書と書いてあるのも納得でした。

「全文をとことん読みやすくしました。91分で読めます」という表紙の文に踊らされ、何分で読み終わるか測ってしまいました…不覚。ちなみに85分程でした。

 

真似る演技について書いてあるところが面白かったです。

老人を体をかがめるように演技すると、古臭くありがちになってしまうし、実際の老人はいわゆる「老人らしい」動きをしようとしない、ということ。

狂人を演じるときに、その姿形だけを似せて本当に「狂人」を演じてしまうと感動は得られない。狂うに至った辛い思いなどを理解して演じる必要があること。

鬼を演じるときにも、本物を演じてしまっては強くて恐ろしいだけになってしまい、面白く感じるわけがないので、面白く感じさせる手がかりが必要なこと。

 

「演じる」というのは、人に見せることが前提だということなので、単純に似せることではなく、どう見えるか見た人がどう感じるかが重要なのだと思いました。

 

また、見る人の様子に合わせることの重要性についても書いてありました。

舞台成功のためには、まずは会場の雰囲気を見極めることが必要だそうです。

観客の期待度や今の様子、心理にうまく合わせて演出すること。これは、普段の人間関係や他の仕事でもとても重要なことだなと思います。

どんな状況でも舞台を成功させるには、観客の目利き度合いや演じる場を考慮することも必要だそうです。

自分の自信のない演目は、田舎の小さな舞台のときに練習しなさいという言葉には、笑ってしまいましたが。

 

自分の成長という面から印象的だったことも、二つ。

「上手は短所に、下手は長所に気づかない」というのは、耳の痛い話でした。

下手な人は、自分の悪いところがわからないと同時に、たまたま持っている、誰しもが持っている自分のよいところにも気づかないそうです。

これは、ありがちなことだなと思います。

よいところは多かれ少なかれ誰でももっている。ただでさえ下手なのに、よいところを見つけられず磨こうとせずでは、何もできないのでは…と思います。

二つ目は、「技術を高めることと、能を理解すること」の話。

どちらももちろん必要ですが、どちらが先かというと、能の理解があれば、どの場でどの能をすべきかがわかり、名声が長続きするのでは、ということでした。

 

 

また、一番気になった箇所は、「幽玄」についてです。

怒る演技をしてるときに、柔らかな心を忘れてはいけない。

幽玄な様をまねるときに、強い気持ちを忘れてはいけない。

片方に偏らない考え方は、聞いていて安心します。忘れないようにしたいと思います。